

膝の関節の中には、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぐ、2本の靭帯が十字に交差しています。前側にあるのが前十字靭帯(ACL)、後ろ側にあるのが後十字靭帯です。
前十字靭帯には、主に次のような役割があります。
この靭帯は関節の中にあり、血流が乏しいため、一度切れてしまうと自然にはつながりにくいという特徴があります。そのため、スポーツを続ける方では手術が検討されることが多いケガです。

前十字靭帯損傷の多くは、相手とぶつかったときではなく、自分の動きの中で起こります(非接触型損傷)。
●起こりやすい場面
このとき、膝が内側に入り、つま先が外を向いた「ニーイン・トーアウト」と呼ばれる姿勢になると、靭帯に大きな負担がかかります。
●多い競技
バスケットボール、サッカー、ハンドボール、バレーボール、スキー、ラグビーなどで多くみられます。
●女子選手に多い理由
女子選手は、同じ競技の男子選手と比べて、前十字靭帯損傷が数倍起こりやすいと報告されています。理由はひとつではなく、次のような要因が重なっていると考えられています。
このうち、動きの癖や筋力のバランスはトレーニングで改善できる部分です。これが、後で述べる予防トレーニングが大切な理由です。
FAQ
歩けるようになったので、病院に行かなくても大丈夫でしょうか?
前十字靭帯損傷は、腫れや痛みが引くと普通に歩けるようになることが多いケガです。しかし、靭帯が切れたまま運動を再開すると、膝くずれを繰り返して半月板や軟骨を傷めるおそれがあります。膝をひねって大きく腫れた場合は、症状が落ち着いていても一度受診して確認しましょう。
中学生でも手術は受けられますか?
成長期の場合、骨が伸びる部分(成長軟骨板)への影響に配慮した方法や時期を検討する必要があります。一方で、ぐらついたまま運動を続けると半月板などを傷めるリスクもあるため、成長の段階や症状をふまえて、専門の医療機関と相談しながら方針を決めていきます。
予防トレーニングは、どのくらい続ければ効果がありますか?
短期間で終わらせるのではなく、ウォーミングアップの一部として、シーズンを通して継続することが大切です。週に2〜3回以上、正しいフォームで行うことを目安にしてください。フォームに自信がない場合は、リハビリテーションの専門職にチェックしてもらうと安心です。
参考文献
・日本整形外科学会、日本膝関節学会 監修「前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019(改訂第3版)」南江堂
・日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「膝前十字靱帯損傷」
・Hewett TE, et al. Biomechanical measures of neuromuscular control and valgus loading of the knee predict anterior cruciate ligament injury risk in female athletes: a prospective study. Am J Sports Med. 2005.