

上腕二頭筋は、いわゆる「力こぶ」をつくる筋肉です。肘を曲げる筋肉として知られていますが、実は上端は肩の関節までつながっています。
この筋肉は上のほうで2本に分かれており、外側を走る長頭と、内側を走る短頭があります。このうち長頭腱は、上腕骨の前面にある結節間溝という細い溝の中を通り、そのまま肩関節の中に入り込んで、肩甲骨の上端(関節上結節)に付着しています。
つまり長頭腱は、腕を動かすたびに、骨の溝の中を滑車のロープのように行き来しているわけです。この構造上、次のような負担がかかります。
この摩擦と牽引が繰り返されると、腱と、それを包む腱鞘に炎症が起こります。これが上腕二頭筋長頭腱炎です。
発症しやすいのは次のような方です。
40代以降では、加齢に伴う腱の変性が背景にあることも多く、特別な運動をしていなくても発症します。

上腕二頭筋長頭腱炎の痛みには、いくつかの特徴があります。
●痛む場所が限られている
肩の前面、鎖骨の外端より少し下、腕の付け根のあたりです。「ここが痛い」と指1本で示せることが多いのが特徴です。押すと明確に痛みが出ます。
●特定の動作で強まる
●痛みが腕の前面に沿って広がる
肩から力こぶの方向へ、線状に痛みが下りてくることがあります。
●夜間痛があることもある
痛む側を下にして寝ると痛むため、寝返りで目が覚めることがあります。
一方で、肩全体が固まって上がらないという状態にはなりにくく、初期は動く範囲そのものは保たれていることが多いのが五十肩との違いです。
FAQ
肩の前が痛みますが、腕は普通に上がります。それでも受診したほうがよいですか?
動く範囲が保たれている段階は、治療がしやすい時期です。この時期に負担のかかり方を修正しておくと、関節が固まる二次的な問題や、腱の断裂を防ぎやすくなります。痛みが2週間以上続くようであれば、一度確認しておくことをおすすめします。
痛いけれど筋トレは続けてよいですか?
腕を頭上に上げる種目や、手のひらを上に向けて重量を持ち上げる種目は、腱に直接ストレスがかかるため、痛みのある時期は避けてください。下半身や体幹のトレーニング、肩甲骨まわりの軽い運動は続けて構いません。再開の順番については、リハビリテーション担当者と相談しながら決めましょう。
力こぶの形が変わってしまった気がします。手術が必要ですか?
腱が断裂して力こぶの位置が下がることがあります。日常生活に大きな支障がなければ、必ずしも手術が必要とは限りません。ただし、肘を曲げる力や前腕をひねる力の低下が仕事や競技に影響する場合、見た目が気になる場合には手術が検討されます。まずは状態の評価が必要ですので、ご相談ください。
参考文献
・日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「肩の痛み」
・日本肩関節学会 一般の方向け情報
・日本整形外科学会 肩関節疾患に関する診療情報