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青魚の油が関節と筋肉を助ける。「オメガ3脂肪酸」と炎症の上手な付き合い方

ハイライト

サバやイワシ、サンマなどの青魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」。体の中で炎症を落ち着かせる方向に働くことから、関節のこわばりや運動後の筋肉の回復との関係が注目されています。ただし、食べればすぐに痛みが消える「特効薬」ではありません。どんな働きがあるのか、どれくらい、どうやってとればよいのか、運動やリハビリテーションとどう組み合わせるのかを、わかりやすく解説します。

目次

オメガ3脂肪酸とはどんな油か

油というと「体に悪いもの」というイメージを持たれがちですが、脂質は細胞の膜やホルモンの材料になる、欠かせない栄養素です。その中でも、体の中で作ることができず、食事からとる必要があるものを必須脂肪酸といいます。オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)はそのひとつです。

代表的なものは次の3つです。

α-リノレン酸は体の中で一部がEPAやDHAに変わりますが、その量は多くありません。そのため、EPAとDHAは魚から直接とるのが効率的です。

もうひとつの必須脂肪酸に、オメガ6脂肪酸(n-6系脂肪酸)があります。サラダ油やコーン油、加工食品に多く含まれています。オメガ6も必要な栄養素ですが、現代の食生活ではとりすぎになりやすく、オメガ3とのバランスが大切だと考えられています。

炎症と関節・筋肉との関係

炎症というと悪者のように聞こえますが、本来はケガや細菌から体を守り、傷んだ組織を修復するための大切な反応です。問題になるのは、炎症が長引いたり、必要以上に強くなったりしたときです。

●関節では

関節リウマチでは、関節を包む膜に炎症が続き、腫れや痛み、朝のこわばりが起こります。変形性関節症でも、軟骨がすり減る過程で関節の中に炎症が起こり、痛みや水がたまる原因になります。

●筋肉では

慣れない運動をした翌日以降に出る筋肉痛は、筋肉の細かな傷とその修復に伴う反応と考えられています。また、年齢とともに体の中で弱い炎症が続く状態が、筋肉量の減少(サルコペニア)にも関わっているのではないかと研究が進められています。

オメガ3脂肪酸は、体の中で炎症を落ち着かせる方向に働く物質の材料になります。一方、オメガ6脂肪酸からは炎症を起こす方向に働く物質も作られます。食事の中のバランスが、炎症の起こり方に影響すると考えられているのはこのためです。

EPAやDHAは、細胞を包む膜に取り込まれて、そこから炎症の調整に関わる物質が作られます。そのため、食事を変えてから体の中のバランスが入れ替わるまでには、ある程度の時間がかかります。

●こんな食生活になっていませんか

若い世代や子育て世代では、調理の手間や子どもの好みから、魚料理が減りやすい傾向があります。中高年の方でも、食べる量が減るにつれて、魚や肉といったたんぱく源そのものが不足しがちです。思い当たる方は、まずは一品を置き換えるところから始めてみましょう。

研究でわかっていること、わかっていないこと

オメガ3脂肪酸については、多くの研究が行われています。現時点でのおおまかな見方を整理します。

◾️比較的報告が多いこと

  • 関節リウマチなどの炎症性の関節の痛みについて、オメガ3脂肪酸の摂取で朝のこわばりや痛みが軽くなったとする研究がまとまって報告されている
  • 中性脂肪を下げる働きがあり、医療用の薬としても使われている

◾️まだ結論が出ていないこと

  • 変形性膝関節症の痛みを改善するかどうか
  • 運動後の筋肉痛の軽減や、高齢の方の筋肉量・筋力を保つ効果がどの程度あるか

つまり、オメガ3脂肪酸は「とれば関節痛が治る」というものではなく、体の中の炎症のバランスを整える食生活の一部として考えるのが適切です。痛みの原因そのものへの対応は、診察やリハビリテーションと並行して行う必要があります。

上手なとり方と、気をつけたいこと

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、オメガ3脂肪酸の1日あたりの目安量が年齢・性別ごとに示されており、成人ではおおむね2グラム前後です。

◾️食事でとる工夫

  • 魚料理を週に数回、できれば青魚を取り入れる
  • 焼き魚、煮魚に加え、サバやイワシの水煮缶を活用する(汁にも脂が溶け出しているので、料理に使うのがおすすめ)
  • 刺身でとると、加熱で失われる脂も逃しにくい
  • えごま油やあまに油は熱に弱いため、加熱せずにドレッシングや仕上げにかける
  • くるみをおやつに少量取り入れる

◾️1週間の献立の例

  • 月曜日…サバの塩焼き
  • 水曜日…イワシの水煮缶を使った炊き込みご飯やトマト煮
  • 金曜日…ブリの照り焼き、またはサーモンのムニエル
  • 週末…家族で手巻き寿司や刺身(アジ、カツオ、マグロなど)

毎日魚を食べなくても、週に2〜3回、主菜を魚に置き換えるだけで、とる量は大きく変わります。お子さんには、骨をとった切り身や、ほぐした身を混ぜたおにぎりなどが食べやすいでしょう。

◾️気をつけたいこと

  • サプリメントは食事の補助と考え、量を増やせばよいわけではありません
  • 血液をさらさらにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方は、サプリメントを使う前に主治医に相談してください
  • 妊娠中の方は、一部の大型魚(キンメダイ、メカジキなど)を食べる量に目安が示されています。サバやイワシ、サンマなどは通常の範囲で心配はいりません
  • 魚の油は酸化しやすいため、開封した油や缶詰は早めに使い切りましょう

成長期のお子さんにとっても、DHAは脳や目の発達に関わる大切な栄養素です。家族みんなで魚料理を囲む習慣づくりがおすすめです。

運動・リハビリテーションと組み合わせて体を整える

関節や筋肉の健康は、栄養だけでも運動だけでも十分ではありません。両方がそろってはじめて、体はよい方向へ変わっていきます。

●関節の痛みがある方

  • 痛みのない範囲で関節を動かし、こわばりを防ぐ
  • 太ももの前の筋肉など、関節を支える筋肉を鍛える
  • 体重を適正に保ち、膝や股関節の負担を減らす

●筋肉を保ちたい方

  • たんぱく質を毎食とり、オメガ3脂肪酸を含む魚をその一品にする
  • スクワットやかかとの上げ下ろしなど、脚の筋力運動を続ける

●運動をしている若い方

  • 練習後の食事で、主食・たんぱく質・野菜に魚を組み合わせる
  • 十分な睡眠で、筋肉の回復を助ける

当院のリハビリテーションでは、関節や筋肉の状態に合わせた運動の指導に加え、日常生活での食事や過ごし方についてもご相談に応じています。「最近、関節がこわばる」「筋力が落ちてきた」と感じる方は、食卓の見直しとあわせて、体の動かし方も一緒に整えていきましょう。

FAQ

よくある質問

Q

魚が苦手です。サプリメントで代わりになりますか?

A

サプリメントでもEPAやDHAをとることはできます。ただし、魚にはたんぱく質やビタミンDなど、骨や筋肉に役立つ栄養も含まれています。缶詰やツナ、魚肉ソーセージなど食べやすい形から試してみるのもおすすめです。サプリメントを使う場合は、持病や飲んでいる薬について医師や薬剤師に確認しましょう。

Q

どのくらい続ければ効果がありますか?

A

オメガ3脂肪酸は、食事を通じて体の中の脂肪酸のバランスが少しずつ変わっていくものです。数日で実感できるものではありません。数か月単位で食習慣として続けること、運動やリハビリテーションと組み合わせることが大切です。

Q

関節が痛いときは、食事だけで様子を見てもよいですか?

A

関節の痛みには、変形性関節症、関節リウマチ、痛風、けがなど、さまざまな原因があります。腫れや熱っぽさがある、痛みが続く、動かしにくいといった場合は、食事だけで様子を見ずに一度受診して原因を確認してください。

参考文献

・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
・厚生労働省「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」
・Goldberg RJ, Katz J. A meta-analysis of the analgesic effects of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for inflammatory joint pain. Pain. 2007;129(1-2):210-223.



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