2026年6月20日
ハイライト
骨がスカスカになり、わずかな衝撃で骨折してしまう「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」。初期には痛みが全くないため「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれ、骨折して初めて気づくケースが後を絶ちません。早期発見の唯一の手段は骨密度検査です。特に女性は閉経を迎える50歳前後、男性は70歳を超えたら一度は受けるべきです。本記事では、世界的な標準測定法である「DXA法(デキサほう)」の仕組みやメリット、さらに骨密度低下を防ぐためのリハビリテーションと運動療法の基本について整形外科専門医が分かりやすく解説します。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、骨の量(骨密度)が減少し、骨の微細な構造が変化することによって骨の強度が低下し、骨折しやすくなる病気です。
この病気の最も恐ろしいところは、進行しても「痛みなどの自覚症状がほとんどない」という点にあります。
そのため、医療現場では「サイレント・ディジーズ(※静かなる病気)」と呼ばれています。
多くの人は、以下のような何気ない日常の動作を行ったときに、突然骨折して初めて自分が骨粗鬆症であることに気づくのです。
骨粗鬆症による骨折は、特に中高年層の生活の質(※QOL)を著しく低下させます。
なかでも「大腿骨近位部(※太ももの付け根の骨)」を骨折すると、自力での歩行が非常に困難になり、そのまま寝たきり状態や要介護状態になってしまうリスクが極めて高くなります。
統計データによると、高齢者が要介護になる原因の第3位が「骨折・転倒」であり、その背後にはほぼ確実に骨粗鬆症が存在しています。
また、背骨が自重に耐えきれずに押しつぶされるように骨折する「脊椎圧迫骨折」を起こすと、背中が丸くなり、内臓が圧迫されて呼吸機能や消化機能の低下を招きます。
さらに、1回背骨を圧迫骨折すると、周囲の背骨にかかる負担が増えるため、ドミノ倒しのように次々と隣の骨が折れていく「骨折の連鎖(※二次性骨折)」が始まります。
このように、骨折が起きてから慌てて治療を始めるのでは、元の元気に歩ける状態に戻すのが非常に困難になります。
だからこそ、骨折する前に骨密度の低下をいち早く検査で察知し、対策を講じる「早期発見・早期治療」が何よりも重要となるのです。

では、健康寿命を守るための骨密度検査は、具体的に「いつから」受け始めるのが適切なのでしょうか。
性別、年齢、そして個人の生活習慣によって適切なタイミングが異なります。
女性ホルモンである「エストロゲン」は、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する極めて重要な働きを持っています。
しかし、閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が急激にストップします。
これにより、骨をつくるスピードよりも骨を破壊するスピードが大幅に上回り、骨密度が年間数%という加速度的なペースで減少し始めます。
したがって、50代に入ったら、あるいは閉経を迎えたと感じたら、自覚症状が一切なくても必ず一度は骨密度検査を受けるべきです。
その最初の測定値を基準として、その後は1〜2年に1回の定期的な受診を強く推奨します。
男性には女性のような急激なホルモン変化はありませんが、加齢に伴い骨をつくる骨芽細胞の働きが緩やかに低下していきます。
70歳を超えたら、骨の状態を確認するために一度は検査を受けることをおすすめします。
以下に該当する方は、遺伝的要因や生活習慣によって若い段階から骨密度が低下している可能性が高いため、年齢に関わらず早めの検査が推奨されます。
・軽微な衝撃(立ち上がったときの転倒など)で骨折した経験がある
・両親や祖父母に骨粗鬆症(特に太ももの付け根の骨折)の経験者がいる
・極端な食事制限(ダイエット)や偏食の経験がある
・ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)を病気の治療で長期服用している
・喫煙習慣がある、または毎日アルコールを多量に摂取している
・胃の切除手術を受けたことがある(カルシウムの吸収力が低下するため)
これらのリスクに心当たりがある方は、たとえ40代であっても整形外科での骨密度測定をおすすめします。